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Q:相続開始後に金額が確定する成年後見人の報酬や水道光熱費又は通信費等は、債務控除の対象かどうか?
A:いずれも債務控除の対象となるものと考えます。水道光熱費と通信費については、請求書等で請求額の計算期間を確認すれば、相続開始日までの日割り計算が可能です。
相続税法13①で相続税の課税価格に算入すべき価額は、財産の価額から次に掲げる金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額によるとされています。
一 被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)
二 被相続人に係る葬式費用
また、相続税法14①では、控除すべき債務は、確実と認められるものに限るとし、相続税法22では、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、その財産の取得の時における時価により、その財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況によるとしています。
税法上、債務の定義はされていませんが、金融機関からの借入金やクレジットカードの未払金、医療費や介護サービス等がイメージできると思います。
成年後見人報酬、水道光熱費、通信費はいずれも、被相続人が役務の提供を受けた対価として支払うものであり、債務が確実に存在することは明らかです。では、控除すべき金額は?というと、相続開始時点では必ずしも明らかではありません。成年後見人報酬については家庭裁判所に報酬付与の申立てをして、家庭裁判所が被後見人の財産状況等を勘案して報酬額が決定(民法862)され、水道光熱費及び通信費についてはそれぞれの締め日をもって支払額が確定します。
さて、ここで相続開始の時点で控除すべき金額が確定していないにもかかわらず、債務控除していいのかどうかと疑問を抱く鋭い方もいらっしゃるかと思いますが、次の点からも相続開始時点において債務の金額が確定していなくても債務控除は可能であると考えます。
①債務には公租公課を含みます。被相続人の準確定申告による所得税等は、相続開始時点で納税義務が成立はしますが、申告をしていませんので納税額は確定しておりませんが債務控除の対象です。(相続税法施行令3)
②相続税法基本通達14-1に次のように規定されています。
債務が確実であるかどうかについては、必ずしも書面の証拠があることを必要としないものとする。
なお、債務の金額が確定していなくても当該債務の存在が確実と認められるものについては、相続開始当時の現況によって確実と認められる範囲の金額だけを控除するものとする。(昭57直資2-177改正)
また、少し古いですが、明治37年12月公布の相続税法第5条では、「第三条ニ依リ控除スヘキ債務金額ハ政府カ確実ト認メタルモノニ限ル」とされているところ、明治38年1月相続税に関する大蔵大臣訓示の第7条で、「相続財産中ヨリ控除スヘキ債務ハ政府カ確実ト認メタルモノニ限ルト雖モ、政府ニ於テ認定スルニハ必スシモ書面ノ証拠アルコトヲ必要トセサルヲ以テ、苟モ成立確実ト認メラルルモノハ書面ノ有無ニ拘ハラス之ヲ控除シテ妨ケナキモノトス。」とあり、明治38年3月相続税法問答においては、税法第3条(5)に「相続財産ノ価額ヨリ控除スヘキ公課及債務ニハ、未タ納税告知ヲ受ケサルモノ及被相続人ノ負債ニ対スル相続後ノ利子ヲモ包含スルヤ」の答えとして、「未タ告知ヲ受ケサルモ納税義務ノ確定シタルモノ、及未タ支払期ニ至ラサルモ被相続人ノ債務ニ属スル契約期限マテノ利子ハ、総テ控除スルモノトス」とあります。
債務控除については、相続税法13①の「相続開始の際」や同法22の「現況による」というような表現から、時間的な幅を持たせて、債務の存在のみならず(相続税法基本通達14-3(保証債務及び連帯債務)のとおり)その債務の履行の確実性をも確認したうえで、債務控除の対象とするように求めているように思われます。後見人をなさっている司法書士又は弁護士の先生におかれましては、最後の後見費用が債務控除の対象となり得ることを相続人様にお伝えいただきますようお願いいたします。
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