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法人がプロスポーツ選手と契約をする際に支払う契約金は、支払った事業年度の損金とするのではなく、繰延資産としてその支出の効果の及ぶ期間に相当する年数で償却します。
それでは条文等を確認します。
法人税法2①二十四
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
繰延資産 法人が支出する費用のうち支出の効果がその支出の日以後一年以上に及ぶもので政令で定めるものをいう。
法人税法施行令14
法第二条第二十四号(繰延資産の意義)に規定する政令で定める費用は、法人が支出する費用(資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用を除く。)のうち次に掲げるものとする。
一 創立費(発起人に支払う報酬、設立登記のために支出する登録免許税その他法人の設立のために支出する費用で、当該法人の負担に帰すべきものをいう。)
二 開業費(法人の設立後事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用をいう。)
三 開発費(新たな技術若しくは新たな経営組織の採用、資源の開発又は市場の開拓のために特別に支出する費用をいう。)
四 株式交付費(株券等の印刷費、資本金の増加の登記についての登録免許税その他自己の株式(出資を含む。)の交付のために支出する費用をいう。)
五 社債等発行費(社債券等の印刷費その他債券(新株予約権を含む。)の発行のために支出する費用をいう。)
六 前各号に掲げるもののほか、次に掲げる費用で支出の効果がその支出の日以後一年以上に及ぶもの
イ 自己が便益を受ける公共的施設又は共同的施設の設置又は改良のために支出する費用
ロ 資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立ちのき料その他の費用
ハ 役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用
ニ 製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用
ホ イからニまでに掲げる費用のほか、自己が便益を受けるために支出する費用
2 前項に規定する前払費用とは、法人が一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出する費用のうち、その支出する日の属する事業年度終了の日においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。
法人税法基本通達
(職業運動選手等の契約金等)
8-1-12 法人が職業運動選手等との専属契約をするために支出する契約金等は、令第14条第1項第6号ホ《その他自己が便益を受けるための費用》に規定する繰延資産に該当するものとする。(昭55年直法2-8「二十八」により追加、平19年課法2-3「十八」、平19年課法2-17「十六」により改正)
(注) セールスマン、ホステス等の引抜料、仕度金等の額は、その支出をした日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。
法人税法基本通達
(繰延資産の償却期間)
8-2-3 令第14条第1項第6号《公共的施設の負担金等の繰延資産》に掲げる繰延資産のうち、次の表に掲げるものの償却期間は、次による。(昭46年直審(法)20「4」、昭48年直法2-81「20」、昭55年直法2-8「二十九」、平12年課法2-19「十二」、平19年課法2-3「十九」、平19年課法2-17「十七」、平30年課法2-8「八」により改正)
該当条項
種類
細目
償却期間
令第十四条第一項第六号ホ《その他自己が便益を受けるための費用》に掲げる費用
職業運動選手等の契約金等(8-1-12)
契約期間(契約期間の定めがない場合には、3年)
(注)
1 法人が道路用地をそのまま、又は道路として舗装の上国又は地方公共団体に提供した場合において、その提供した土地の価額(舗装費を含む。)が繰延資産となる公共施設の設置又は改良のために支出する費用に該当するときは、その償却期間の基礎となる「その施設又は工作物の耐用年数」は15年としてこの表を適用する。
2 償却期間に1年未満の端数があるときは、その端数を切り捨てる。
所得税法施行令
(報酬、料金、契約金又は賞金に係る源泉徴収)
第三百二十条
6 法第二百四条第一項第七号に規定する政令で定める契約金は、職業野球の選手その他一定の者に専属して役務の提供をする者で、当該一定の者のために役務を提供し、又はそれ以外の者のために役務を提供しないことを約することにより一時に受ける契約金とする。
所得税法
(源泉徴収義務)
第二百四条 居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金の支払をする者は、その支払の際、その報酬若しくは料金、契約金又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。
七 役務の提供を約することにより一時に取得する契約金で政令で定めるもの
法人税基本通達8-2-3に職業運動選手等の契約金等の償却期間は、契約期間(契約期間の定めがない場合は3年)とありますので、法人と選手との間の契約書に契約期間の定めがある場合には、その年数で償却し、定めがない場合には3年で償却します。
私見であり、正確なことは実際の契約書を確認してみない判断できませんが、日本プロフェッショナル野球協約2025の第9章に保留選手について定めがあり、要約すると次のとおりです。保留球団は全保留選手名簿に記載される契約保留選手等に対して保留権を有し、全保留選手は他の球団と選手契約に関する交渉等が禁止されています。つまり、いずれの球団にも保留されていない選手に支払う契約金を球団からの自由契約(契約解除)又は保留選手がフリーエージェント権を取得等するまで他の球団と交渉等ができない(一定の者に専属して役務の提供をする者で、その一定の者のために役務を提供し、又はそれ以外の者のために役務を適用しないことを約する。)ことの対価としてとらえた場合、法人税法上の考え方としては、契約時から自由契約又はフリーエージェント権を取得等するまでの期間が契約金の支出の効果が及ぶ期間と考えることができると思われます。
※補足として、フリーエージェント規約第2条においては、入団後初めて出場選手登録された後、その日数が試合期間中に145日を満たして、これが8シーズンに達したときに、国内フリーエージェント資格を取得するとされているようです。
この頁は契約金を支払う側について記載しましたが、当事務所では、契約金の支払いを受ける側のプロスポーツ選手の確定申告も承っております。
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