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国税庁の青色申告制度の解説ページNo.2070 青色申告制度|国税庁では、次のように3区分にした解説があります。
1.不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいる青色申告者で、正規の簿記の原則により記帳し、その記帳に基づいて作成した貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付して、その確定申告書を提出期限までに提出している場合には、最高55万円の青色申告特別控除を受けることができる。
2.上記1の最高55万円の青色申告特別控除を受けることができる方が、電子帳簿保存またはe-Taxによる電子申告を行っている場合は、最高65万円の青色申告特別控除を受けることができる。
3.上記1以外の青色申告者については、不動産所得、事業所得及び山林所得を通じて、最高10万円を控除する。
では、条文にはどのように書いてあるのか見ていきましょう。先に結論を申し上げますと、4区分に分類されています。
(1) 所規57から64を満たす青色申告者は最高55万円(不動産所得と事業所得)
イ 所法148(青色申告者の帳簿書類)
所法143(青色申告)の承認を受けている居住者は、財務省令で定めるところにより、同条に規定する業務につき帳簿書類を備え付けてこれに不動産所得の金額、事業所得の金額及び山林所得の金額に係る取引を記録し、かつ、当該帳簿書類を保存しなければならない。
財務省令で取引の記録方法や帳簿の保存方法等が定められているようです。
ロ 所規56(青色申告者の備え付けるべき帳簿書類)
青色申告者(法第百四十三条(青色申告)の承認を受けている居住者をいう。以下この節において同じ。)は、法第百四十八条第一項(青色申告者の帳簿書類)の規定により、その不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務につき備え付ける帳簿書類については、次条から第六十四条まで(青色申告者の帳簿書類の備付け等)に定めるところによらなければならない。ただし、当該帳簿書類については、次条から第五十九条まで(青色申告者の帳簿書類)、第六十一条(貸借対照表及び損益計算書)及び第六十四条(帳簿書類の記載事項等の省略又は変更)の規定に定めるところに代えて、財務大臣の定める簡易な記録の方法及び記載事項によることができる。
帳簿書類の詳細については、所規57から64に定められているようです。
ハ 所規57(取引の記録等)、所規58(取引に関する帳簿及び記載事項)、所規59(仕訳帳及び総勘定元帳の記載方法)、所規60(決算)、所規61(貸借対照表及び損益計算書)、所規62(親族の労務に従事した期間等の記録)、所規63(帳簿書類の整理保存)、所規64(帳簿書類の記載事項等の省略又は変更)
また、所規58と所規61には、それぞれ次のように記載があります。
所規58 財務大臣の定める取引に関する事項を記載しなければならない。
所規61 財務大臣の定める科目に従い、貸借対照表及び損益計算書を作成しなければならない。
ニ 昭和42年8月31日 大蔵省告示第112号所得税法施行規則第五十六条第一項ただし書、第五十八条第一項及び第六十一条第一項の規定に基づき、これらの規定に規定する記録の方法及び記載事項、取引に関する事項並びに科目を定める件(帳簿書類の記録保存関係)税制関係の主な告示 : 財務省に財務大臣が定める取引に関する事項と科目について記載されています。
告示の1と2において、所規58については別表第一の第一欄に、所規61については別表第二の第一欄に詳細を定める旨が記載されています。
ホ 措法25の2③(青色申告特別控除)
青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている個人で不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営むもの(所得税法第六十七条第一項の規定の適用を受ける者を除く。)が、同法第百四十八条第一項の規定により、当該事業につき帳簿書類を備え付けてこれにその承認を受けている年分の不動産所得の金額又は事業所得の金額に係る取引を記録している場合(これらの所得の金額に係る一切の取引の内容を詳細に記録している場合として財務省令で定める場合に限る。)には、その年分の不動産所得の金額又は事業所得の金額は、同法第二十六条第二項又は第二十七条第二項の規定により計算した不動産所得の金額又は事業所得の金額から次に掲げる金額のうちいずれか低い金額を控除した金額とする。
一 五十五万円
二 所得税法第二十六条第二項又は第二十七条第二項の規定により計算した不動産所得の金額又は事業所得の金額の合計額
赤色のマーカー箇所に括弧書きがあります。一切の取引の内容を詳細に記録している場合というのは、どういう状態なのでしょうか。施行規則を確認しましょう。
へ 措規9の6①(青色申告特別控除)
法第二十五条の二第三項に規定する一切の取引の内容を詳細に記録している場合として財務省令で定める場合は、同項に規定する個人が同項の不動産所得又は事業所得を生ずべき事業につき備え付ける帳簿書類について、所得税法施行規則第五十七条から第六十二条まで及び第六十四条の規定に定めるところにより記録し、かつ、作成している場合とする。
上記ハの内容とほぼ同じですね。この要件を満たすことによって、最高55万円の特別控除を受けることができます。
(2) 所規57から64を満たす青色申告者が、電子帳簿保存又は電子申告をした場合は最高65万円(不動産所得と事業所得)
ト 措法25の2④(青色申告特別控除)
前項に規定する個人が同項に規定する場合に該当する場合において、次に掲げる要件のいずれかを満たすものであるときは、同項第一号中「五十五万円」とあるのは、「六十五万円」として、同項の規定を適用することができる。
一 その年における前項に規定する帳簿書類のうち財務省令で定めるものにあつては、財務省令で定めるところにより、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(平成十年法律第二十五号)第四条第一項又は第五条第一項若しくは第三項に規定する財務省令で定めるところに従い、当該帳簿書類に係る同法第二条第三号に規定する電磁的記録の備付け及び保存又は当該電磁的記録の備付け及び当該電磁的記録の同条第六号に規定する電子計算機出力マイクロフィルムによる保存を行つていること(当該帳簿書類に係る当該電磁的記録の備付け及び保存又は当該電磁的記録の備付け及び当該電磁的記録の当該電子計算機出力マイクロフィルムによる保存が、同法第八条第四項に規定する財務省令で定める要件を満たしている場合に限る。)。
二 その年分の所得税の確定申告書の提出期限までに、情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律(平成十四年法律第百五十一号)第六条第一項の規定により同項に規定する電子情報処理組織を使用して、財務省令で定めるところにより、当該確定申告書に記載すべき事項(前項の規定の適用を受けようとする旨及び同項の規定による控除を受ける金額の計算に関する事項を含む。)及び前項に規定する帳簿書類に基づき財務省令で定めるところにより作成された貸借対照表、損益計算書その他不動産所得の金額又は事業所得の金額の計算に関する明細書に記載すべき事項に係る情報を送信したこと。
一項で電子帳簿保存について、二項で電子申告について定めています。いずれかの要件を満たした場合には、55万円に10万円を上乗せして最高65万円の控除を受けることができます。
(3) 所規56のただし書の青色申告者は最高10万円(不動産所得と事業所得と山林所得)
チ 所規56条(青色申告者の備え付けるべき帳簿書類)
上記ロのただし書の緑色マーカー部分で、青色申告者であっても財務大臣の定める簡易な記録の方法及び記載事項によることができる旨の記載があります。青色申告者であったとしても、正規の簿記の原則によらずに財務大臣の定める簡易な記録方法等を認めているようです。財務大臣の定める簡易な記録の方法及び記載事項はどのようなものなのでしょうか。再び告示を見てみましょう。
リ 昭和42年8月31日 大蔵省告示第112号所得税法施行規則第五十六条第一項ただし書、第五十八条第一項及び第六十一条第一項の規定に基づき、これらの規定に規定する記録の方法及び記載事項、取引に関する事項並びに科目を定める件(帳簿書類の記録保存関係)税制関係の主な告示 : 財務省
告示の3において、不動産所得の金額、事業所得の金額及び山林所得の金額が正確に計算できるように、必要な帳簿を備え、別表第一の第二欄に定めるところにより、整然と、かつ、明瞭に取引を記録することを求めております。そして別表の備考欄を確認すると、「日々の記載を省略して一括記載することができる」や「現金売上又は現金仕入として記載することができる」というような文言があります。こういった点から、冒頭の国税庁の解説においては、本区分と次の4の現金主義の小規模事業者の区分をまとめて簡便的に解説しているものと推察されます。しかし、本区分においては年末における売掛金や買掛金等の残高の記載を求めていることからも、完全な現金主義とは異なるようです。
ヌ 措法25の2①(青色申告特別控除)
青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている個人のその承認を受けている年分(第三項の規定の適用を受ける年分を除く。)の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額は、所得税法第二十六条第二項、第二十七条第二項又は第三十二条第三項の規定により計算した不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額から次に掲げる金額のうちいずれか低い金額を控除した金額とする。
一 十万円
二 所得税法第二十六条第二項、第二十七条第二項又は第三十二条第三項の規定により計算した不動産所得の金額、事業所得の金額(次条第一項の規定の適用がある場合には、同項に規定する社会保険診療につき支払を受けるべき金額に対応する部分の金額を除く。第三項第二号において同じ。)又は山林所得の金額の合計額
青色マーカー部分の括弧書きで第三項の規定の適用を受ける年分を除くと記載がありますので、上記(1)の55万円控除と上記(1)の読みかえ規定である(2)の65万円控除を受ける者が除かれます。
ル 措法25の2③(青色申告特別控除)
青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている個人で不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営むもの(所得税法第六十七条第一項の規定の適用を受ける者を除く。)が、同法第百四十八条第一項の規定により、当該事業につき帳簿書類を備え付けてこれにその承認を受けている年分の不動産所得の金額又は事業所得の金額に係る取引を記録している場合(これらの所得の金額に係る一切の取引の内容を詳細に記録している場合として財務省令で定める場合に限る。)には、その年分の不動産所得の金額又は事業所得の金額は、同法第二十六条第二項又は第二十七条第二項の規定により計算した不動産所得の金額又は事業所得の金額から次に掲げる金額のうちいずれか低い金額を控除した金額とする。
一 五十五万円
二 所得税法第二十六条第二項又は第二十七条第二項の規定により計算した不動産所得の金額又は事業所得の金額の合計額
所法56のただし書の規定の適用を受ける者は、簡易な記録方法によるため、所法148に規定する帳簿書類の備え付けや取引の記録を行っていないため、措法25の2③(55万円控除)ではなく措法25の2①(10万円)が適用されます。また、措法25の2④は措法25の③の要件を満たしている者が適用対象者であるため、措法25の2①の規定の適用を受ける者が電子申告等を行ったとしても青色申告特別控除が20万円になるということはありません(次の(4)において同じです。)。
(4) 所法67の現金主義の小規模事業者である青色申告者は最高10万円(不動産所得と事業所得)
ヲ 所法67①(小規模事業者等の収入及び費用の帰属時期)
青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者で不動産所得又は事業所得を生ずべき業務を行うもののうち小規模事業者として政令で定める要件に該当するもののその年分の不動産所得の金額又は事業所得の金額(山林の伐採又は譲渡に係るものを除く。)の計算上総収入金額及び必要経費に算入すべき金額は、政令で定めるところにより、その業務につきその年において収入した金額及び支出した費用の額とすることができる。
小規模事業者は、不動産所得の金額と事業所得の金額の計算において、収入金額と必要経費をその年に入金した金額と出金した金額とすることができる旨が記載されていますが、小規模事業者の意義については記載がありません。所令に記載があるのかどうか見てみましょう。
ワ 所令195①(小規模事業者の要件)
法第六十七条第一項(小規模事業者等の収入及び費用の帰属時期)に規定する政令で定める要件は、次に掲げる要件とする。
一 その年の前々年分の不動産所得の金額及び事業所得の金額(法第五十七条(事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例等)の規定を適用しないで計算した場合の金額とする。)の合計額が三百万円以下であること。
小規模事業者の要件について記載がありました。所法67①の小規模事業者とは、2年前の所得計算について、事業専従者給与を必要経費に含めずに計算した所得金額が300万円以下である事業者です。2年前とは、令和7年分の所得計算をする場合には、令和5年分です。(所通67-1 前々年分の所得金額の判定)
カ 所令196(小規模事業者の収入及び費用の帰属時期)
法第六十七条第一項(小規模事業者等の収入及び費用の帰属時期)に規定する居住者で前条各号に掲げる要件に該当するもののその年分(不動産所得を生ずべき業務及び事業所得を生ずべき業務の全部を譲渡し、若しくは廃止し、又は死亡した日の属する年分を除く。)の不動産所得の金額及び事業所得の金額(山林の伐採又は譲渡に係るものを除く。)の計算上総収入金額に算入すべき金額は、法第二編第二章第二節第三款(収入金額の計算)(法第四十一条(農産物の収穫の場合の総収入金額算入)を除く。)の規定の適用を受けるものを除き、その者の選択により、これらの業務につきその年において収入した金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入した場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とすることができる。
所法67の規定の適用を受ける年分の不動産所得の金額及び事業所得の金額の計算上、収入金額に算入すべき金額は、たな卸資産等を自家消費した場合等一定の場合を除き、その年に収入した金額とすることができる。
2 前項の規定の適用を受ける居住者のその年分の同項に規定する不動産所得の金額及び事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、償却費並びに法第五十一条第一項及び第四項(資産損失の必要経費算入)の規定の適用を受けるものを除き、その年においてこれらの所得の総収入金額を得るために直接支出した費用の額及びその年においてこれらの所得を生ずべき業務について支出した費用の額とする。
所法67の規定の適用を受ける年分の不動産所得の金額及び事業所得の金額の計算上、必要経費に算入すべき金額は、償却費等の一定のものを除き、その年に支出した費用(直接経費及び間接経費)の額とすることができる。つまり、減価償却費等は金銭の支出を伴いませんので、発生主義で計算することが必要です。
ヨ 所規56②(青色申告者の備え付けるべき帳簿書類)
法第六十七条第一項(小規模事業者等の収入及び費用の帰属時期)の規定の適用を受ける青色申告者は、前項の規定にかかわらず、第六十条(決算)の規定による棚卸資産の棚卸を行うことを要しない。
小規模事業者は棚卸が不要です。年末における売掛金及び買掛金の計上も求められていませんので、当然のような気もします。
タ 昭和42年8月31日 大蔵省告示第112号所得税法施行規則第五十六条第一項ただし書、第五十八条第一項及び第六十一条第一項の規定に基づき、これらの規定に規定する記録の方法及び記載事項、取引に関する事項並びに科目を定める件(帳簿書類の記録保存関係)税制関係の主な告示 : 財務省
このページにおいて3回目の登場ですが、所法67の小規模事業者についても、本告示の3に記載があります。所法67の規定の適用を受ける者の事業所得又は不動産所得に係る取引については、別表第一号又は第二号の第三欄に定めるところにより記録することができるとされています。第三欄は現金出納帳と減価償却資産(繰延資産を含む。)に関する事項について記載があります。つまり、いわゆる現金主義による記帳が求められています。
レ 措法25の2③(青色申告特別控除)
青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている個人で不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営むもの(所得税法第六十七条第一項の規定の適用を受ける者を除く。)が、同法第百四十八条第一項の規定により、当該事業につき帳簿書類を備え付けてこれにその承認を受けている年分の不動産所得の金額又は事業所得の金額に係る取引を記録している場合(これらの所得の金額に係る一切の取引の内容を詳細に記録している場合として財務省令で定める場合に限る。)には、その年分の不動産所得の金額又は事業所得の金額は、同法第二十六条第二項又は第二十七条第二項の規定により計算した不動産所得の金額又は事業所得の金額から次に掲げる金額のうちいずれか低い金額を控除した金額とする。
一 五十五万円
二 所得税法第二十六条第二項又は第二十七条第二項の規定により計算した不動産所得の金額又は事業所得の金額の合計額
55万円の控除を受けることができる措法25の2の③の橙色マーカー部分の括弧書きでにおいて、所法67の規定の適用を受ける者が除かれているため、措法25の2③(55万円控除)ではなく、措法25の2①(10万円)が適用されます。
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